異世界遊記 2話 異世界転移
2024年12月3日 23:40
「おい、大丈夫か?」
光太郎は、眼をギュッと絞り、ゆっくりと目を開けた。
「っつ」
光太郎は起き上がると頭を押さえた。
手には鮮血が着いている。
「起きたぞ!よかった!」
水色の僧衣のような服を羽織った坊主の男が光太郎の肩を叩き喜んでいる。
光太郎は辺りを見回した。
(部屋じゃない・・・・・・)
光太郎のまわりには本が散乱していた。
(どれも見慣れない本だ)
光太郎が上を見上げた先には、本がぎっしり天上まで収納されていた。2階に行く梯子が光太郎の前に倒れていた。
(蔵書館か?・・・・・・)
「よかったよ、起き上がらなかったらどうしようかと思った!」
若い坊主の男が言った。
「あなたはいったい?」
光太郎が言うと、若い坊主の男は笑いながら光太郎の背中をバシバシ叩いた。
「お前、まじかよ。サイパウだよ」
「サイパウ・・・・・・外国の方?」
「お前、まじで面白ぇな。友達(だち)だよ」
サイパウは肩に担いでゆっくりと光太郎を立ち上がらせた。
「お前、本当にわからないのか?」
光太郎は口を開けて何かを言おうとすると、口をつぐんだ。。
「オレは誰だ」
光太郎の返答にサイパウは不思議そうな顔をした。
「ゲンダイだろ?」
「ゲンダイ?」
「よっぽど打ちどころが悪かったんだな。お前はゲンダイという名前だよ」
サイパウはゲンダイの頭をさすった。
「クナルラ老師に観てもらおう」
「クナルラ老師?誰だそれ」
サイパウは苦い顔をした。
「こりゃ、重傷だ」
「サイパウ、オレの家じゃないのか?」
「ゲンダイ、ここはシャカシャ寺院だよ」
「シャカシャ寺院?聞いたこともない」
サイパウはゲンダイの頭に布を当て、ゲンダイの症状の深刻さに黙った。
「なあ、サイパウ。今日は何月何日なんだ?」
「界紀666年、12月3日だ」
「界紀?何だ、その界紀ってのは」
サイパウは心配そうな顔をした。
「ゲンダイ、明日の試験大丈夫か?」
「試験って何だよ」
「洛京の役人の選抜試験だよ」
「ラッキョウ?食い物か?」
「ゲンダイ、それ、皆に言わない方がいいぞ。からかわれるぞ」
立ち上がると2人はゆっくりと入口に向かって歩き出した。
「選抜試験って何するんだ?」
「・・・・・・ゲンダイ。地理、歴史、読み書き算術だよ」
「方程式とかか?」
「方程式?なんだそれ。ゲンダイ、勉強しすぎだ。今日も蔵書館で落下してるんだから程々にしとけよ。勉強もいいけど自分の名前ぐらい覚えておけよ」
「ゲンダイ・・・・・・それが、おれの名なのか?」
「お前は、ゲンダイだ!誰がなんと言おうとゲンダイなんだよ!」
サイパウは、ゲンダイの肩を持って、蔵書館の出入口の扉を開けた。
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