セコムザムライ

1
スーパームーンの秋の夜のことだった。
世間ではアニメの海賊の名前の強盗団が報道されていた。
夜の闇夜に乗じて、2人の強盗が薄暗い一軒家の窓を開けようと物色していた。
そそくさと塀の中に紛れ込んだ。
「早くしろ、急げ」
強盗の1人は窓ガラスを丁寧に音がしないように切り出した。
「へへ」
2人は顔を見合わせて笑った。

2
月が窓ガラスに映っていた。よく見ると人影が映っている。
強盗達は慌てて後ろを振り向いた。
「サ、サムライ!」
着物姿で刀を差した男が立っていた。
「お前たち、不埒な強盗団だな」
強盗は急いでナイフを取り出し、身体の前に構えた。
サムライは刀を抜き、中段に構えた。

3
今から3年前に遡る。
「おー蜷巻、これで剣客になって自宅警備でもやってみな」
失業して、引きこもりだったオレに、羽山久斎は一振りの刀を渡した。
蜷巻は鞘から刀身を15センチぐらい抜いて刀身を確かめた。
刃引きしてある模造刀だった。
「これは?」
「引きこもりのお前へのプレゼントだ。男なら自宅ぐらい守れ」
「でもオレ、世間が怖いんだよ」
蜷巻は小声で言った。
「その模造刀はギャル曽根虎徹だ。人の罪を無限に喰いてくれる。斬られた相手は魂が浄化されるという優れものだ」
羽山は笑って言った
「それで剣客をやって、それでもまだ、甘っちょろい戯れ言を言えるなら、またオレに会いに来い」

4
蜷巻はギャル曽根虎徹で強盗2人に一閃を浴びせた。
ナイフは宙を舞い、金属音と共に転がった。
強盗2人は抜け殻のようになってその場に倒れこんだ。
「久斎どの。今日も、自宅を守れましたよ」
遠くで警察のサイレンが鳴っているのが聞こえた。
刀を鞘にしまい、さささと走って蜷巻は姿を消した。

5
現場に警察が到着して、住宅の主に聞き込みをしている。
「金属音はしたのですが、それ以外は何も」
「では、誰が通報されたのです?」
警察は主に聞いた。
「わかりませんね」
放心状態の強盗2人は、「自分が悪かったです」としか答えなかった。
「ここのところ、こんな事件が多いな」
「強盗未遂事件ですよね。だれかが関与しているかもしれんな」
警官は顔をあげ空を見上げた。
大きな月が夜の闇を照らしていた。

2024/10/25 16:17:02 キクシェル

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