美玲はスマホをタップして、地図をスクロールする。
「いたいた!あそこに!」
美玲は隣にいた和香に興奮気味に言った。
「さっきジャンパーを買った人だ」
「実験は成功のようね」
美玲と和香は美玲のアパレルショップに向かった。
「美玲、あなたは一体何がしたいの?」
「世界中のジャンパニストの動きを把握したいの」
和香は何言っているのだという風なしぐさをして眼を細めた。
「あのね、そんなことして何の意味があるの?」
和香があきれたように言うと、美玲はまあまあと肩を叩いて、スマホの画面を和香に見せた。
「これ、イケメンでしょ?」
「まあね」
「この人、ジャンパーでしょ」
美玲は男の服装を指さした。
「そうね。これが何だって言うの」
美玲は得意そうに右の口角を上げて、和香の肩をポンポンと叩いた。
「私は気づいちゃったのよ。イケメン、イコール、ジャンパーを着ている、という方程式に」
和香は顔が固まったまま何も言えなかった。
「ということは、逆をいえばジャンパーを着ているのがイケメンということになる」
美玲はスマホのアプリを開いた。
「全てのイケメンを私の管理下におくのが私の夢なのよ。イケメンたちはいつどこにいても私に出会うことを待っている世界。最高じゃない?」
美玲はスマホのアプリにポイントアイコンが動いている様を和香に楽しげに見せた。
「いつもイケメンたちの動向を把握できる!素晴らしい世界が到来したのよ!」
美玲はふふふと満足げに笑っている。
「私はあなたに協力するのやめようかな」
和香は本心を言った。
「なんでよ!あなたの技術なしではジャンパーに端末つけられないじゃない」
美玲は急に怒り始めた。
「ジャンパーを着ている人がイケメンかもしれないけど、いろいろなジャンパニストがいるし」
「ちょっと、ジャンパニストっていうのやめてよ」
美玲は和香につかみかかった。
「ジャンパニストはあなたのその性格知ったらみんな逃げて行くよ」
和香は美玲の手を振りほどき言った。
「うるさい、私は、イケメンと恋をしたいのよ!」
美玲は両手で顔を覆い、泣き始めた。
「付き合いきれないわ」
和香はあきれてその場から立ち去った。
和香は1時間ほど近所のカフェによった後、最寄り駅に向かった。
ホームの階段に見知った女が立っていた。
美玲だった。
「あなた、どうしてここに?」
「あなたにも端末つけてたの」
美玲は笑顔で言った。
「私はイケメンじゃないわよ」
和香が言うと、美玲はわらった。
「友達でいてくれて、ありがとうっていうの忘れてた」
「端末つけるのこれっきりにしてくれる?」
和香は笑顔で端末を取り外した。
「うん。じゃあ、また連絡する」
和香は美玲が手を振るのを電車の中から見送ってスマホに手をやった。
(あの女、また彼氏のアパートの方にいった。浮気してるわね)
和香は、次の停車駅で降り、彼氏のアパートへ向かった。
2024/11/21 19:36:03 キクシェル
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