山の奥に神様をフェロモンで引き寄せるというフェロモン神を祀る神社があった。
参拝客はフェロモン神社を参拝すると、金運が上がったなど、良縁に恵まれたなど御利益がとてもあった。それは、フェロモン神社が神様を引き寄せるからに他ならなかった。
ある女性がフェロモン神社を参拝した。
お守りに、香袋を購入した。
帰りに、変わった匂いがすることに気づき、持っていた香水を香袋にかけた。
不思議な香りがするようになった。
フェロモン神社は石段の上の方にあったので、帰りは下りの階段だった。
その帰りの石段で女性は躓き捻挫をしてしまった。
そして、財布も落としてしまい、財布は石段から山の斜面へ滑落していった。
女性は落胆した。フェロモン神社は神様を引き寄せるのではなかったのか。
石段の下の方から中年の男性が上ってくるのが見えた。
中年男性は女性に声をかけた。
「なにか、できることはありませんか」
「捻挫をしてしまったのです。石段の下に連れて行ってもらえませんか」
中年男性は一度石段の上を見た後、女性を見た。
「一緒に、この山を下りましょう」
「頼んでおいてこんなことを言うのもおかしいのですが、フェロモン神社に行かなくてもいいのですか?」
中年男性はニッコリ笑った。
「ええ、神様はあなたに出会わせてくれたのだと思います。私はそれで満足です」
女性もニッコリ笑い、照れた。
二人は肩を組んで一段ずつ、石段を降りていったのでした。
2024/09/17 16:27:05 キクシェル
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