短編

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短編9 バス停の男と神社の女

そのバス停は神社のそばにあった。その神社は街中にあり、小さな石柱で神域をあらわしており、バス停からは神社の境内の中が見えるのだ。ツンとした臭いが鼻をかすめた。振り向くと、ひとりの中年の女性がバス停のそばを歩き、通り過ぎていった。(3日間はた...
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短編8 八百屋の新婚旅行

その日、八百屋を閉めたのは午前7時半だった。朝の販売は盛況で、野菜はサツマイモ2袋を残して全て売れていたのだ。『しばらく休みます。1週間後、元気にお会いできるのを楽しみにしています』手製の張り紙をシャッターに貼った。八百屋のおやじさんは、い...
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キクシェル短編6 雪の日の足あと

雪が降った。昨日の夜から降り続け、今朝方は真っ白だった。この地方に単身、引っ越してきて、雪が積もるのは初めてのことだ。年甲斐もなく表に出てみる。白い新しい降り積もったばかりの雪が足を踏み出すとギギと音をたてる。ああ、心地よい。新しい雪の独特...
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キクシェル短編5 においまんじゅう

においまんじゅうそのまんじゅう屋を見つけたのは、営業契約がとれないの午後のことだった。「田舎ってのはどうしてこうも食いつきがわるいのかね」芦原幸夫は、赤いレンガの花壇に腰掛けて、固まっていた首を馴らした。(こんな人のいない地域のまんじゅう屋...
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キクシェル短編1 やめられない

キクシェル短編集1やめられない「とにかくやめられない」「何を?」「とにかくやめられない」「何を?」「どうにかしたい」「だから何を?」「でも、今はやめる気ないし」「だから何を?」「それはね・・・・・・」冬の夜風が冷たく、2人に吹き付けた。「絶...