短編

短編

短編15 分厚いファイルの中心で

空調の音が低くうなっている。河西は、薄暗い資料室で数冊のファイルを手にした。資料をパラパラとめくる。上司の命令で、膨大な量の資料整理を頼まれた。ここ先週からこの一室から出られない生活が続いている。資料整理とは聞こえがいいが、要するに、主要戦...
短編

短編13 蚊取り家族

大平家は大広間に集まって、家族団らんをしていた。大黒柱の権蔵がのしのしと歩いてきて、上座にドスンと座ると、家族は権蔵の方を見た。「夏菜、お茶くみはいいから座りなさい」長女の夏菜は、湯飲みを権蔵の前に置くと、下座に座った。「今日は、真剣に人類...
短編

短編12 カエルの恋

アオイドガエルはアカイドガエルと共に井戸を這い上がった。「見ろよ。オレたちの前に新しい世界が広がってるぜ」井戸を登り切るとアカイドガエルは言った。2匹のカエルはぴょんぴょんと跳ねていった。「見ろよ、あれがトンボが言ってた海って奴だぜ」山の中...
短編

キクシェル短編5 においまんじゅう

においまんじゅうそのまんじゅう屋を見つけたのは、営業契約がとれないの午後のことだった。「田舎ってのはどうしてこうも食いつきがわるいのかね」芦原幸夫は、赤いレンガの花壇に腰掛けて、固まっていた首を馴らした。(こんな人のいない地域のまんじゅう屋...