日曜日よりの
「うぐいすさん、あなたの番、来ましたよ」
北雀うぐいすは、座席の横から、のそっと起きあがって、マイクに手を伸ばした。
十八番の『日曜日よりの使者』のイントロが流れてきた。
「このまま、どこか遠く、連れてって、くれないか~」
半透明なドアのガラスから、大勢の人が行き交うシルエットがチラリと見えた。
「ガヤがうるさいみたいですね」
北雀うぐいすには、スピーカーの爆音と歌声でかき消され、その声は聞こえなかった。
ピピピと赤い明かりを点滅させ、室内の電話が鳴った。
もうそんな時間か。
幸輔は受話器を取って何やら必死に話している。
時間を延長するように交渉してくれているのだろう。
幸輔はいつも自分の身の回りのことを進んでやってくれる、いい友人だ。
「適当な嘘をついて その場を切り抜けて・・・・・・」
幸輔の方を見ると、少し表情がひきつっている。
疑問を音にしたら、音量も音程もこんな感じになるのだなぁ。
数人がドアの前に立っているのが、半透明なドアからシルエットが見えた。
「今すぐ出かけよう 日曜日よりの・・・・・・」
幸輔がゆっくりとドアを開けた。
3人の中年の男が入ってきた。
「警察署のものです。北雀うぐいすさんですね。」
「はい」
エコーがかかった返事と、重低音が響く。
「少し、お聞きしたいのですが、あなた、本日、商店街の宝石店に行きませんでしたか?」
「・・・・・・はい」
エコーがかかった返事の後ろでは、スピーカーからシャラララと流れている。
「ここに来たのはわかりますね?」
「・・・・・・・はい」
「では、ちょっと署まで一緒にきてください」
幸輔がうなだれている。
事情は聴いたのかもしれない。
「迎えにくるんだろ!幸輔!」
幸輔は返事をしなかった。
次の曲『明日への扉』のイントロが虚しく流れていた。
2025/02/21 20:43:06 キクシェル
GoStory
『青信号に変わったとき、1ヶ月、服を洗っていないアーティストが、カラオケボックスで、職務質問された』
結果として、『青信号に変わったとき』『1ヶ月服を洗っていない』『アーティスト』は使われていないことに創作した後で気づきました。
5つの言葉から連想されて創作はできたということで、甘めに評価し、総資産は増えたままとします(笑)。
キクシェル創作総資産:32
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