短編11 日曜日よりの

日曜日よりの

「うぐいすさん、あなたの番、来ましたよ」

北雀うぐいすは、座席の横から、のそっと起きあがって、マイクに手を伸ばした。
十八番の『日曜日よりの使者』のイントロが流れてきた。

「このまま、どこか遠く、連れてって、くれないか~」

半透明なドアのガラスから、大勢の人が行き交うシルエットがチラリと見えた。

「ガヤがうるさいみたいですね」

北雀うぐいすには、スピーカーの爆音と歌声でかき消され、その声は聞こえなかった。
ピピピと赤い明かりを点滅させ、室内の電話が鳴った。

もうそんな時間か。

幸輔は受話器を取って何やら必死に話している。
時間を延長するように交渉してくれているのだろう。
幸輔はいつも自分の身の回りのことを進んでやってくれる、いい友人だ。

「適当な嘘をついて その場を切り抜けて・・・・・・」

幸輔の方を見ると、少し表情がひきつっている。
疑問を音にしたら、音量も音程もこんな感じになるのだなぁ。
数人がドアの前に立っているのが、半透明なドアからシルエットが見えた。

「今すぐ出かけよう 日曜日よりの・・・・・・」

幸輔がゆっくりとドアを開けた。
3人の中年の男が入ってきた。

「警察署のものです。北雀うぐいすさんですね。」

「はい」

エコーがかかった返事と、重低音が響く。

「少し、お聞きしたいのですが、あなた、本日、商店街の宝石店に行きませんでしたか?」

「・・・・・・はい」

エコーがかかった返事の後ろでは、スピーカーからシャラララと流れている。

「ここに来たのはわかりますね?」

「・・・・・・・はい」

「では、ちょっと署まで一緒にきてください」

幸輔がうなだれている。
事情は聴いたのかもしれない。

「迎えにくるんだろ!幸輔!」

幸輔は返事をしなかった。

次の曲『明日への扉』のイントロが虚しく流れていた。

2025/02/21 20:43:06 キクシェル

GoStory

『青信号に変わったとき、1ヶ月、服を洗っていないアーティストが、カラオケボックスで、職務質問された』

結果として、『青信号に変わったとき』『1ヶ月服を洗っていない』『アーティスト』は使われていないことに創作した後で気づきました。

5つの言葉から連想されて創作はできたということで、甘めに評価し、総資産は増えたままとします(笑)。

キクシェル創作総資産:32

コメント

タイトルとURLをコピーしました