異世界幕末ファンタジー:龍斬丸

ある月の綺麗な夏の夜のことだった。

栄都の亜津藩には宗太郎という奉公人が藩邸で雑務をこなしている。
宗太郎は、その夜、仕事を終えたあと、主人の寝床へ忍び足で向かった。

主人はちょうど寝息を立てて深い眠りに落ちている。

(薬が効いたようやな・・・・・・)

宗太郎は、床の間をみると大小二振りの見事な刀が置いてあった。

(龍斬丸・・・・・・)

日皇王国の古書によれば戦国の世に作られた刀で、
竜魔獣の甲皮も簡単に切ることができるといわれている。

宗太郎は刀を抱きかかえるようにして障子を開け、眠っている藩主に一礼した。

(今まで、おせわになりやした)

宗太郎は刀に布を被せて巻き、まとめてあった荷物を持って裏口から藩邸を出た。

宗太郎は栄都の城下町を走った。

そして、ある建物の前について、息を整えた。

長珠藩の藩邸が大きな門が月明かりに異様だった。

「お話ししたいことがありやす」

門を開けてもらい、藩邸の中に入ると、宗太郎は小さな部屋に通された。
しばらくすると白髪交じりの髷の侍がのしのしと足音をさせて現れた。

「長州藩家老、真城雷電である」

「亜津藩奉公人、宗太郎と申します」

真城は指の長さほどの髭を撫でながら、ぐっと力を入れて宗太郎を見た。

「こんな夜中に何用じゃ?」

「わたくし、尊王攘夷に身をささげたいと思っており、主君に使えておりました。
 ですが、主君は将軍の命令に耳をかすばかりです。」

「尊王攘夷のう・・・・・・」

真城は髭を撫でながらゆっくり目を閉じた。

「わたくし、大老の異国との勝手な魔森焼却条約はおかしいと思っておりまする」

「おぬしは、なぜそんなに幕府を嫌うのじゃ?真意を述べよ」

「幕府の役人に父を殺されました。幕府などこの世に必要ありませぬ」

宗太郎は、口を一文字に閉めた。

「なるほど・・・のう」

「ご家老様、長珠藩で藩士に取り立てて頂けないでしょうか」

「残念だが、平太郎。我らは亜津藩には因縁があるのじゃ。
 おぬしの出自が漏れれば、お主の命も危うい。
 お主の気持ちを信じぬわけではないが、
 今一度冷静になり、考え直すことじゃ」

平太郎は布をほどき、包みを開けて刀を取り出した。

「これは、亜津藩の主君の愛刀、龍斬丸でございます。主君への絶縁の覚悟はこの刀にありまする」

平太郎は真城に刀を渡した。

「龍斬丸・・・・・・」

真城は龍斬丸の刀をまじまじと見たあと、しばらく髭を撫でて考え込んだ。

「よかろう。長珠藩の藩士とする。おぬしは間者の才能がありそうであるから、
 命京に移り、各藩の様子を調べるのじゃ」

「では、藩士として取り立てて頂けるので?」

「うむ。お主には禄を与えてもらえるよう進言しておく。龍斬丸はこちらで預かる」

「宜しくお願いいたします」

平太郎は頭を畳につけた。


2026/04/30 15:09:59 キクシェル

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