「はった、はった」
今日も賭場は活況だった。
その中に景気よく稼いでいる客がいた。
朝から賭場に入り浸って、調子よくコマ札を稼いでいた。
男が賭場を訪れたのは、午後のことだった。
「達馬善二郎(たつまぜんじろう)だな」
達馬はコマ札を手の上でトントンと揃えて、男の顔を見た。
「見たことない顔だな」
「ちょっと話がある。一緒に来てくれ」
「今いいところなんだよ。後にしてくれ」
男は刀を抜いて、達馬のアゴの下に切っ先を向けた。
賭場にいた客は驚いて、ちりじりに慌てて出て行った。
「おうおう旦那さんよ、誰のシマだと思ってるんだ?」
賭場の男たちは脇差しを抜いて、賭場の戸を閉めた。
「すまんな、ここで遊んでいるわけにはいかんのだ」
と言ったと同時に、刀が舞い、手前の男を切りつけた。
更に刀は閃き、一瞬にして賭博師たちは切り伏せられた。
達馬はそれを見て、
「あまり見ない流派の剣術だ」
「古流、天水流。一度、あなたとも手合わせしたいと思っている」
男は、血を拭いて、刀を鞘にしまった。
「で、なんの用かね」
「決起が決まりました。うちの大将が、あなたを連れてこいと」
達馬は腕を組んで首をかしげた。
「おかしな人だ。そのために、人を斬るとは」
「あなたが、動く気配がありませんでしたのでね」
「賭博師を斬れば、俺が言うことを聞くと思ったか?」
達馬はぎろりと男をにらみつけた。
「・・・・・・そうは申しておりません」
「お前に一つだけいっておく。命を大事にしない奴はオレはすかん。今後、無駄な殺生はするな」
達馬はそう言うと腰を上げ、刀を取った。
「わかりました。肝に銘じておきましょう」
「大将のもとへ案内せよ」
男と達馬は賭場を出て、通りを走って去った。
2026/05/07 04:02:48 キクシェル

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