異世界幕末ファンタジー:大獄と密勅

夏の夜明けのことだった。
日皇朝廷と桜川将軍の関係は悪化していた。
少し前に、鳳明皇王の水兎藩への幕政改革の密勅がくだされたことが影響している。
それは、桜川幕府が西華帝国と朝廷の許可を得ずに次期将軍を決め、
日西魔森焼却条約という不平等条約を締結したことに鳳明皇王がお怒りになった。
皇王は、桜川幕府を通さず、水兎藩へ秘かに攘夷を実行するように密勅を出したのであった。

水兎藩は幕府に近く、尊王攘夷思想も強い気風だったために、鳳明皇王には頼みの綱だった。
これに激怒した大老、江井青弼(えいあおすけ)は、
「朝廷が将軍を軽視し徴発してきた」
と激昂した。

水兎藩は皇王派と幕府派で二分され、結局、密勅は返納するということになった。
しかし、江井青弼は対応の遅れで激怒し、密勅に関わったもの、
幕府に批判的なものを弾圧し大量粛清した。

これが、江井の大獄である。
江井が青鬼と呼ばれた所以でもある。

諸藩の優秀な人材が多く粛清されていった。
それと同時に、皇王こそが正義という風潮が高まったのである。

日皇朝廷内では会議が開かれていた。

「攘夷論のものはことごとく粛清されているのはわかった」

鳳明皇王は真面目な顔をして、

「では、江井大老は私も粛清するつもりなのか?」

といった。

「何と畏れ多いことでございます。そんなことは断じてございませぬ」

右大臣はそういって、少し頭を下げた。

「大老は、多くの有能なものを処罰しているというが、人材こそ国の宝。皆もそう思わぬか?」

「おっしゃるとおりでございます。しかし、皇王君のおわします朝廷の力は数百年前に比べ衰え、幕府なしでは政権を運営することができませぬ」

「では、どうするべきか?」

「今、私は答えを持ち合わせておりませぬが、きっと希望ある未来がありますゆえ、ご安心くださいますよう申し上げます」

「右大臣。時代は混乱を極めている。異国も陰謀を張り巡らせて、この国を滅ぼそうとしているだ」

「朝廷だけ残るよう異国に交渉しておきまするか?」

「民を失ってまでこの朝廷を残そうとは思わん。民が救われないのなら、わが身を賭して異国人を打ち払う!」

「しかし、皇王が命を捨てますると、この国は完全に滅んでしまいます。民もどこを頼りにしてよいかわからなくなりまする。だからこそ、皇王はこの国の不死山のようにあってくださいませ」

「では・・・・・・わかっておるな。江井を処分せよ」

「それは密勅でございますか?」

「そうだ。藩家老の仇を討てと。仕損じるな。と水兎藩に伝えよ」

右大臣は両手の拳をついて頭を垂れた。



2026/05/07 3:53:19

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