夜、戌の刻(19時~21時)。
指導者が数人のお供を連れて、西華帝国の領事館に入っていった。
執務室には領事のハリトンがタバコを吹かして、クッションの柔らかそうな豪華な椅子に座っていた。
「御家老さん。こんな時間になんのようか?」
ハリトンは、煙を吹いて、手で椅子に座るよう促した。
「ハリトンさん。約束のものは手に入るんでしょうな」
ハリトンは、鼻から煙を吐いた。
「勘違いするなよ、御家老さん。いいか、わが帝国に従うならいくらでも新式デビルス銃でも軍艦でも用意する。御家老さん。あなたの藩はまとまっていない。幕府を倒すなら倒すでしっかりやってもらわないと困るよ、御家老さん」
「我々は倒幕の意志を固めている。だが、まだ藩内には幕府に忠誠を誓うものも多い」
指導者はそういうと、書簡を取り出した。
ハリトンは、タバコを灰皿におしつけ、書簡を受け取り、広げ読んだ。
「なるほど、皇王を誘拐するとは、なかなか大胆な方法だな」
ハリトンはタバコをケースから取り出し、火をつけ、煙を吐いた。
「皇王を誘拐してどうする?」
「我らが官軍となり、幕府を賊軍として始末する」
「御家老さん、そう、うまくいくか? そして、皇王はわが帝国に従うつもりなんだな?」
「それは・・・・・・」
指導者は、言葉を詰まらせた。
「御家老さん。わが帝国に従うなら、わが帝国の武器を売ってやる。従わないなら、帝国はこの国を侵略する。どっちを選ぶか?」
「我が国は国の始まる前の神々の時代から日皇王国としてこの地にある。故に、どこに従うとかというものでは申せませぬ。そして、仮にあなた方、帝国がこの国を侵略するなら、全力で抵抗するだろう。それが、日皇王国の侍」
ハリトンはタバコを吹かして、いらだちを見せた。
「あのな、御家老さん。我らはあなたの国と、日西魔森焼却条約を結んでいるんだ。共に、魔森の拡大をくい止めねばならん。わが西華帝国に協力するのがあなた方との約束。同盟国の約束を守らないのが侍か?」
「魔森焼却に関しては我々はあなたとは意見が異なる。魔森は焼却できるものではないと考えている。現に、赤虎帝国は大部分に魔森が広がり、あなた方の西華帝国も今、魔森の拡大に苦慮しているという。つまり、魔森は焼却しようとすれば広がるのではないかというのが我々の見立てである。無益に魔森を焼くことは大自然の理に反すると考えている」
ハリトンはタバコを書簡におしつけた。
皇王という文字がタバコの火によってボロボロと焼け落ちた。
「わが帝国はこんな国一瞬にして灰にできる。忘れるな。どっちが賢いのか」
ハリトンはタバコを灰皿に押しつけてを書簡を机に叩きつけた。
2026/05/07 4:04:20 キクシェル

コメント