3隻の商船が長珠藩の赤関の港へ、入港したのは、冬の深夜のことだった。
新型デビルス銃1000丁が運び込まれるという噂が、町民の間で流れており、
幕府との戦争が近いとおびえ出すものもいた。
上白松道善(うえしらまつどうぜん)は50人の農民、町人の有志らと共に、港に展開していた。
「道善さん、来ましたぜ」
ほおかむりをしている農民の太平がそういうと、
「商船を奪うぞ。合図しろ」
と、道善は前屈みになった。
「待ってました」
太平は、ドラを5回打って鳴らした。
すると、あちこちで「敵襲だ!」と声が上がり、港は騒がしくなった。
「いくぞ!」
道善は、そういうと、太平に指示をした。
太平は、商船の護衛が甘くなったところでドラを2回鳴らした。
ドラの合図で商船に10人ずつの部隊が乗り込む手はずだった。
商船の前に来たが、誰も現れなかった。
「どうした、何があった。みんな動かないぞ」
商船の前にいた2人の前に、同心達と与力が現れた。
「これは・・・・・・どういうことだ・・・・・・」
「道善さん。すいやせん・・・・・・」
道善は太平を見ると、力の入った顔で道善に視線を合わせた。
「どうしても、今回の幕府との戦争は勝たなければならないんです」
「太平、俺たちは民衆のために戦争をなくそうとしているのだ。お前も賛同したではないか」
「オレの家族はみんな幕府に連座させられて殺されやした。道善さんが戦争をなくすために銃を捨てようとしたことに異論はありやせん。だけれども、銃を捨てても何もかわりやせん。幕府は倒さねばならんのです。」
「太平・・・・・・」
「大丈夫です。捕まっても幕府が滅べば出てこれやす」
「太平、お前が今日海に沈めなかった銃で、何人の人生が終るか知っているのか?その死で、何人の家族が悲しむか知っているのか?」
「・・・・・・・」
太平は、少し沈黙して口を開けた。
「じゃあ、オレのこの気持ちはどうしたらいいでやすか ! 幕府に連座させられ殺された家族の苦しみをどうすればいいでやすか !」
「オレは殺し合いを辞めようと思っただけだ。だが、世の中は殺し合いが続いていく。思いどおりにならない世だが、なんとか変えられないかと思っていたが・・・・・・」
道善は刀を帯から抜き取り、地面に置いた。
2026/05/08 15:56:48 キクシェル

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