いらない

リンゴがひとつ落ちた。

老人はそれをひろうと、少しかじり、芯を投げ捨てた。

老人は幾ばくかの胸の高鳴りを覚えた。

老魔女が木の陰から老人を見ていった。

「わたしのどこがすきなんじゃ」

老人は恐怖にひきつった顔をしながらも、

「あなたのすべて」

と答えた。

老魔女はヒェヒェヒェと笑い、

「嘘つきなじいさんじゃ。かわいいのぉ」

老人はガクガクと泡を吹いて倒れ込んだ。

「そのリンゴはウソをつくと毒が回るんじゃ」

老魔女は老人が衰えていくのを見て、

「わしのどこが好きじゃ」

ととった。

老人は口をパクパクをさせて、

「う、うさんくさいところ」

老魔女は喜んだ。

「わしのみにくいところをすいてくれるなんて何て紳士じゃのう」
「ここに、もう一つリンゴがある、食べるかい?」

老人は目を閉じて、死んだふりをした。

「だめだよ、わかってるよ!さぁ、おたべ」

老人は仰向けになったままリンゴを食べさせられた。

むせながら老人はいった。

「もう、いらんわ。ばばあてめぇ!」

老魔女は喜んだ。

「生き返ったのう!それが大事じゃ。本音できることじゃ」

「これからも本音で生きるんじゃよ、じいさん」

じいさんはニコッと微笑んだ。

「私のことが嫌いじゃったらキスじゃ。私のことが好きじゃったらディープキスじゃ」

じいさんは悶絶した後、ゆっくりと立ち去った。

「そうだよな・・・・・・無理に答えなくってもいいんだわな・・・・・・」

それがじいさんの最後の言葉だった。



2026/05/20 13:57:12


追伸:この短編は、別にチャレンジでも何でもなくて、ムカムカを発散するための、健康のための工夫のようなものです。

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