寅の刻のことだった。
同志の志士の数名がたむろしていた旅籠で、精選組がご用改めで志士数名が斬られたことを知ったのは、安渡雅然(あんどがぜん)が命京での探索を終えたすぐ後のことだった。
安渡が得た情報は、仲間の志士が2人が捕縛され、残りは斬り死にしたとのことだった。
その知らせを聞いて、安渡は精選組に復讐を誓った。
安渡は、長屋へおもむいた。
この長屋は警備が甘く、夜でも自由に入れるという。
それは、腕利きの剣客がすんでいるからであった。
安渡が扉を開けると、暗闇の中で男女がことにおよんでいた。
女は気づいたようで、恥ずかしがったが、男は夢中で最後まで出した。
「岳健(がくけん)!、また女か!」
安渡は呆れたように言った。
郷間岳健(ごうまがくけん)は裸のまま仁王立ちになった。
「わしは男だからな!」
「見りゃわかるよ。はよ服きれ!」
郷間はふんどしを撒いて、着物に袖を通した。
「阿座村、宮内、伊藤が殺された。精選組を討ちにいく。お前も手伝え」
郷間は、ふんと息をして、
「弱いから斬られる。仕方が無いこと」
といい、刀をとった。
「わしを誘うのはいいが、わしは人は斬らんぞ」
安渡は、頭をかいた。
「オレも、人を斬りたくないと思っている。何かいい手はないものか」
「わしのこの刀をみれ」
郷間は安渡に刀を投げ渡した。
「刃がひいてある……なるほど、これなら、殺さずに復讐が遂げられる」
郷間はドスドスと歩いて安渡に近づいて、
「わしはやらんからな」
といった。
安渡はにやりと笑って、
「かわいい女子を紹介するが、どうかな」
郷間は、うーんとうなった顔をして、
「お前の復讐、義があるのはわかる。ならば、わしも動かざるをえんのう」
そういうと、安渡と郷間はにやりと笑った。
ーーーーー用語集ーーーーー
旅籠(はたご):旅人を宿泊させ、食事を提供する宿泊施設(旅館)。
精選組(せいせんぐみ):命京守護職の公認の命京治安組織
安渡雅然(あんどがぜん):一般浪士(長珠藩)
長珠藩(ちょうしゅはん):外様の藩。本州の西の端に位置する。
外様(とざま):関波羅の戦いの後に桜川幕府に従った藩。
桜川幕府(さくらがわばくふ):日皇王国の政治を担う武家組織。
日皇王国(にちすめらおうこく):大陸の東に浮かぶ島国で、日皇王のしらす国。政治は幕府が行なっている。
命京(めいきょう):日皇王の住む、形式上の首都。
長屋(ながや):
郷間岳健(ごうまがくけん):腕利きの剣客。女好き。

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